立山登山にコロナ直撃 室堂の宿泊施設、臨時休業続出 従業員ら感染、予定日に「難民」も
主峰の雄山を背に室堂を散策する観光客。新型コロナの感染拡大で宿泊施設の休業が相次いでいる=7月、立山
立山の登山拠点である室堂(標高2450メートル)と周辺で、新型コロナウイルス感染による宿泊施設の臨時休業が7月末から相次いでいる。感染急拡大が夏山のハイシーズンを直撃し、従業員が次々と罹患(りかん)。15日までに五つの山小屋とホテルが休業し、現在も3施設が営業休止中だ。登山予定日に泊まれない「難民」も出ており、「雲上の楽園」にもコロナの波が押し寄せている。 【写真】御来光を望み万歳する登山者=7月1日午前4時35分、立山・雄山山頂 立山室堂山荘は13日にスタッフ1人の陽性が確認され、14日から休業した。定員は2020年から通常の半分の約150人に減らし、消毒、検温、アクリル板の設置など基本的な感染予防対策を徹底してきた。3代目の佐伯拓さん(34)は「下界と同じで今は誰がかかってもおかしくない状況。経営には痛手だが、誰が悪いという問題でもなく、しょうがない」と複雑な心境を吐露した。 同山荘は18日ごろの営業再開を見込む。20、21年と比べて宿泊客が回復傾向にあっただけに、佐伯さんは「お客さんに本当に申し訳ない」と声を落とした。 約200人収容可能なホテル立山もスタッフ複数人の陽性が分かり、13~22日の休業を決めた。レストランと売店は営業を続ける。 感染拡大は室堂から剱岳方面にも波及。剱澤小屋はスタッフ5人の感染を受け、12日に休業に入った。 小屋ではスタッフの感染予防に細心の注意を払っていた。7月下旬に発熱から陽性の判明した客がヘリコプターで搬送されるなど、登山者を介して感染が広がった可能性もあるという。 予約客の大半は事情を受け入れてくれるが、「予定どうしてくれるんや」と怒られることも度々あった。再開は今月中旬の予定で、オーナーの佐伯新平さん(48)は「少しでも体に異変を感じたら無理をしないでほしい」と呼び掛ける。 室堂平にある最大260人収容の雷鳥荘は15日に営業を再開した。5日にスタッフ5人の感染が分かり、休業を余儀なくされた。代表の林守人さん(48)は「経験したことのない大変さで、一生分、頭を下げた」と、予約客への連絡、宿泊施設の振り替え手続きなどに追われた日々を振り返る。予約客を代わりに受け入れてくれた近隣施設の協力に感謝し、「次は自分たちの番。助けになりたい」と話した。 みくりが池温泉も複数の感染者が出て、7月末に休業し、今月6日に営業を再開した。