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本当のところはどうなの???

今の経済政策を続けて何一ついいことはない 金融緩和と2%インフレ目標の根本的な誤り(記事引用)

今回は日銀が推進している現在の経済政策の誤りについて、指摘しておきたいと思います。

まずは金融緩和です。黒田バズーカとよばれ、マネタリーベースはついに300兆円を突破しました。しかし、2年半に及ぶこの政策、ネガティブ金利にまで発展したわけですが、効果があったのかどうかという検証はいまだになされていません。黒田総裁が、いずれ効果が出ると手形を切りまくっているのが実態です。

実際、小売売上高、個人所得、雇用者数などなど、何を見てもそれが右上がりになった形跡は皆無で、せいぜい小泉改革の2000年代のレベルになったのがやっとという現状。1990年代以降、日銀は絶え間なく金融緩和を続けてきました。しかしまったく効果がなく、それを短期集中すれば効果があるとした「黒田バズーカ」を打ってなお、何の効果も見られない。

■金融機関の経営危機には効果を発揮

おかげで株価が上がったという指摘もありますが、これはどう見てもGPIF、日銀、旧郵政マネーの「3頭のクジラ」によるものであるのは明らかです。つまり、企業としてみればまったく効果のない広告宣伝費を積み上げているようなものですから、普通ならさっさと止めるところです。

アメリカでも金融緩和を進めて景気が回復した、と指摘する声もありますが、それは違います。アメリカも欧州も、ともに金融危機によって引き起こされた金融機関の経営危機という問題を抱えていました。ご存知の通り、リーマンブラザースはまさに倒産しましたし、その他のアメリカの金融機関もほぼ倒産寸前まで追い込まれました。こういう緊急事態においては、金融機関同士の資金が滞留すると本当に連鎖倒産してしまうので、金融緩和は効果的なのです。

つまり、では金融緩和とは何をしているのかと言えば、中央銀行市中銀行に対して資金を融通しているだけであります。われわれのポストにおカネを放り込んでくれるわけではありません。ですからおカネはあくまでも市中銀行に留まり、そこから先は各銀行の判断によるものにしかなりえない。日銀はそれを大量に行えば、圧力に耐えかねて銀行は融資に動かざるをえないとしていますが、本当にそういう行動を銀行がとるのか、頭取に聞いてみればいい。

どうでしょう。いくら資金が潤沢にあるからといって、融資基準を下げておカネを貸すわけがありません。現実の資金需要がない限り、急に融資を受けて投資をするという人もいない。

■供給サイドですべて決められるという古い考え
その上に消費税増税で最終需要は壊滅的に落ち込んでいます。個人消費支出などの統計を見ても、買いたくても何も買うものが並んでいなかったあの2011年3月の支出額をまだ下回っているという状況が何を意味しているのか。その中で、いったいどこの経営者がカネを借りてまで設備投資をするというのでしょうか。

この間違いの大元は、供給サイドだけですべてが決められる――という、実に古い経済学を信奉している現政権の姿勢にあると言えます。高度成長期には需要は常に存在するものでしたから、作れば作るほどものが売れました。設備投資したもの勝ち、ですから今のような金融緩和をすればわれ先におカネを借りて設備投資をした可能性は非常に高い。

しかし、今はその最終需要が極めて成熟し、コマーシャルを打てばものが売れるような単純な状況ではありません。それは読者の皆さんも、ご自身のことを考えればよくおわかりでしょう。どんなに安かろうがいらないものはいらない、という話ですね。仮にプラズマテレビが5000円で買えるからと言って、テレビをもう一台買おう、という人が今の世の中にどれだけいるのでしょう。

安くてもいらないものはいらない。ですからいくら物やおカネを供給したところで、最終需要が活性化するなんて時代ではない。にもかわらず、金融緩和を推し進めれば景気が回復するなんて言うのは、お腹を壊している患者に風邪薬を与えているのに等しい。少なくとも金融危機と無縁だった日本において、まったく効果の期待できない政策と言うしかありません。

もし有効な政策があるとすれば、ある一定の預貸率(資金量に対してどれだけのおカネを融資しているかという比率)を達成しなければ日銀が銀行に対してペナルティーを科す、というような強硬策だと思います。その結果、発生した不良債権に誰が責任を持つのかという問題が発生し、下手をすると銀行の株主から日銀が訴訟をされることになるでしょうから、これは事実上不可能な政策です。ということで、金融緩和はいくらやっても実体経済に対してポジティブな影響を与えることはありえないのです。

■物価目標2%がまかり通る摩訶不思議

経済学では経済成長の結果、賃金などが上がり、企業がその分を商品代に上乗せするので物価上昇が起こる、としています。しかし今はまったく逆で、この物価水準を切り上げれば勝手に景気がよくなるというわけです。物価水準さえあげれば賃金は自動的に上がるのだと――。


これも皆さんの実感からしたら、現実はほど遠いのではないでしょうか。物価が上がる――、黒田総裁は何が何でも年率2%まで上げると宣言しています。その中で、皆さんやご家族はいったいどういう消費行動に移るでしょうか?

そもそもこのロジックは、物価が上がる→来年買うともっと高くなってしまう→今のうちに買っておこうという心理が働く→消費に走る、というトンデモナイ経済理論に基づいています。

来年物価が上がることが仮に決定しているとして、その分を今のうちに消費しようと思いますか?? むしろ来年の給与が上がる保証はまったくなく、物価が来年上がるなら、その分を節約して備えようと思われるのでは。今の消費者の行動はそうなっています。給料が右肩上がりで終身雇用が保障された1980年代までとは違い、来年の給与はおろか、自分の今の仕事でさえあるかどうかわからん、というのが今の世の中です。

その中で日銀総裁が何が何でも物価を上げるぞと宣言されれば、そうか、物価が上がるのであればそれに備えて節約しようという行動をとるのが自然ではありませんか? そして今やまさにそうなっています。GDPの60%を個人消費が占めるのですからこれはまさに「逆噴射」。

こうしてみると、金融緩和にしても物価水準目標にしても、供給サイドをコントロールすれば需要サイドが付いてくるという極めて古い経済理論に依っていることがおわかり頂けるのではないでしょうか。それもこれも、われわれのリアルな生活を想像もできない政策担当者、ブレーンについている学者、政治家が政策を決めているから起きることです。

日銀も終身雇用制をやめて、総裁を含め能力給を大幅に導入したらこんなバカな政策は絶対に続けられません。少なくとも2年の間に物価が上がらなければ腹を切る、とまでおっしゃったわけですから、能力給であれば今頃給与半分です。こうなって初めてわれわれの消費行動がわかるというものでしょう。今のままの経済政策を続けていいこと一つもないことは明らかではないでしょうか。