警察これでいいのか 木原誠二氏問題で元捜査員会見 「なぜ自殺と認定したのか」「再捜査をして根拠示すべき」若狭弁護士
警視庁捜査一課の元捜査員、佐藤誠氏が28日、都内で記者会見を開いた。週刊文春(8月3日号)の衝撃記事「木原事件 妻の取調官 実名告発18時間」に登場した人物で、2006年に東京都文京区の自宅で遺体で発見された男性=当時(28)=の死亡について、「誰が見ても自殺ではなく事件」「異常な捜査の終わり方だった」などと証言した。警察庁や警視庁の幹部は事件性を否定しているが、元捜査員による実名会見は重く、このままでは国民の「警察不信」につながりかねない。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士が、今後の展開を考察した。 ◇ 「佐藤氏の記者会見から『事件性』が色濃く出ており、警察幹部が『自殺』とする見解と大きく乖離(かいり)がある。うやむやにできない」 若狭氏はまず、こう語った。詳しい考察は後述するとして、「伝説の取調官」と呼ばれた佐藤氏の会見には注目すべき点が多々あった。 警視庁は前述した06年の男性の死亡について、18年に事件性を疑って再捜査を始めた。その際、死亡当時、男性と夫婦関係にあった木原誠二官房副長官の妻の事情聴取を何度も行った。取り調べ担当が佐藤氏だった。 佐藤氏は会見冒頭、「正義感というより頭に来た。私は取調官であり、証拠と供述が集中していた。自殺を示すような証拠はなかった。断言します。事件です」「被害者遺族に結論を伝えていない。(警察幹部は)被害者や遺族のことを考えていない。どうせ話すなら、すべてを話すしかない」と語った。 男性の死亡について、警察庁の露木康浩長官が13日の記者会見で、「証拠上、事件性が認められない旨を警視庁が明らかにしている」と語ったことへの憤りが、実名告白の動機だった。 週刊文春は4週連続で、岸田文雄首相の側近、木原氏側が関わる疑惑を追及している。同誌は「十人を超す捜査関係者を訪ね歩き」(7月13日号)などと記し、複数の捜査関係者が「事件性」を認識していたことを報じている。 佐藤氏も会見で、以下のように語っている。 「遺体がないので、豚肉を買ってきて、どれぐらいやれば(ナイフが)ここまで通るかとか実験を何度も繰り返した。当時の家の血の付き方とか、上に飛び散ったり。実験して『これは自殺ではなく事件だ』と」 「当時の写真とか供述調書。誰が見ても事件性がないという警察官はいないと思う」「遺体を移動したり、血がこっちについたり。俺が言っているのは『自殺と認定できる証拠がなかった』ということ」 ただ、佐藤氏は殺人事件としても、「証拠が乏しい」と語っている。 警視庁・国府田剛捜査一課長「証拠上、事件性は認められず」 これに対し、警視庁の国府田剛捜査一課長は28日、報道各社に状況を説明し、「証拠上、事件性は認められず死因は自殺と考えて矛盾はないと確認した」などとコメントした。 警察への信頼に関わる事態。今後、どうすべきか。 前出の若狭弁護士は「殺人の捜査は、第1段階は『事件性があるのか』で、第2段階は『犯人が誰なのか』と2段階に分かれる。佐藤氏の証言からは、事件性が強く疑われる。警察幹部が、なぜ自殺と認定したのかが分からない。重大な問題なので、警察がうやむやにしてはいけない。官房長官も事件に言及するなど、国民的関心を集めている。警察としても再捜査をしたうえで、自殺の根拠を示すのが本来のあり方ではないか」と語っている。