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東京・文京区の湯島地区で、無許可で営業していたスナックが摘発された。単なる風営法違反事件ではない。この店は、最近、再び、増加傾向にあるとされる「ぼったくり」店とみられている。その巧妙かつ悪質な手口を紹介したい。【画像】逮捕された”夜の蝶”。過去からのぼったくり事件を画像で見る。無許可営業スナック「裏の顔」風営法違反の疑いで逮捕されたのは、文京区湯島のスナック「レオパード」経営者で中国籍の胡小玲容疑者(52)と従業員の徐琴容疑者(52)だ。2人は、今年5月からおよそ1カ月間に渡って、無許可でスナックを営業した疑いが持たれている。調べに対して、胡容疑者は、「考えてから話す」と認否を留保。従業員だった徐容疑者も、「やってはいけないと知らなかった」と容疑を一部否認している。警視庁本富士署が、摘発に乗り出した狙い、無許可店舗の摘発ではなく、「ぼったくり」被害対策だ。調べによると、胡容疑者らは、常時、店を開いている訳でなかった。わざわざ、JR新橋駅や赤羽駅まで「遠征」して、そこで客引きを行っていたという。首尾良く、客を捕まえることができれば、そのまま、タクシーに乗せて、店まで連れて来ていたそうだ。酩酊した客をコンビニATMで胡容疑者の店では、客引きに成功してから、店のカギを開けて、電気をつけて、営業を始める仕組みになっていたとされる。とても、まともな営業を努めているようには見えまい。その後、遠くから連れてこられた客たちは、散々、酒を飲まされることになる。この店が、高い度数の酒を、あえて提供していたかどうかは分かっていない。しかし、もともと、ある程度、酒に酔った客を、店に”連行”している訳で、泥酔・前後不覚になるのには、そう時間はかからなかっただろう。足元のおぼつかない男性たちは、容疑者たちに誘導されて、コンビニエンスストアのATMまで連れて行かれていたという。そこで引き出した現金は、店側に渡っていたとされる。「ぼったくり」歌舞伎町から赤羽へ酔った客にに対して、法外な飲食代金を請求する「ぼったくり」。かつては、新宿・歌舞伎町で、被害が多発。2015年には、警視庁に寄せられた相談件数が、歌舞伎町だけで、4カ月間で、1000件を超える事態となった。このため、警視庁が、「民事不介入」から一転して、店の摘発を強化したほどだった。その後、「ぼったくり」被害は、いったん減少したかに見えたが、歌舞伎町から、都内各所の盛り場に、「舞台」が移った印象だ。新橋、錦糸町、赤羽などが、最たる例と言えるだろう。しかも、手口も変わってきた。かつては、クレジットカードの高額請求が、被害のほとんどだった。ところが、昨今は、酩酊した客を、コンビニのATMまで誘導し、現金を引き出させる手口がメインとなっている。その際、店の女性従業員たちは、決して、客のカードには手を触れないという。ATMまでの道のりも、自分の足で歩くように促すとのこと。これは、昏睡強盗や準詐欺容疑での取り締まりを逃れるためとされる。なぜなら、数十万円の高額だったとしても、店側としては、客の”意思”で支払ったと主張できるからなのだ。誰が知恵をつけたのかは分からないが、かなり悪質だ。数年前、新橋で横行した「新型追いはぎ」ならぬ、「ネクスト追いはぎ」とも言える手口だ。事件の本質としては、窃盗被害に近い。多発する”湯島カード”被害とは話を本題に戻そう。その「ネクスト追いはぎ」が、今、湯島地区で多発しているという。しかも、”湯島カード”という、不名誉な通称まで付けられる事態となっているのだ。本富士署によると、今年に入り、湯島地区での「ぼったくり」や「カードの不正決済」など、飲食店に関するトラブル相談は22件。その大半は、“湯島カード”と呼ばれるATMの引き出しで、1回の飲食で80万円の被害に遭った客もいたという。被害者たちは泥酔させられ、どの店に行ったのかなどを覚えていない場合も多いとのこと。湯島地区は、文京区と台東区にまたがり、およそ1000の飲食店が軒を連ねている。都内有数の繁華街・上野にも隣接する。そのため、昔から、「悪質店舗」VS「本富士署・地元商店街」の戦いが、繰り広げられてきたそうだ。最初に、「ぼったくり」の相談が、本富士署に寄せられたのは、今から30年以上前の1989年ごろ。その後、相談や飲食店の増加により、本富士署や地元の商店街は危機感を募らせたという。そして、2000年から、環境浄化パトロールを開始。これまでに、およそ470回実施してきたという。ここ数年は、“湯島カード”の相談が多く寄せられるようになり、店側も、犯行の発覚を遅らせるためか、泥酔した客をタクシーに押し込んで帰宅させるケースもあるそうだ。今回のスナック摘発は、”湯島カード”対策の一環だが、本富士署は、同様の手口を行っている店舗がまだあるとみていて、他の客引きグループの解明など捜査を続けている。