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本当のところはどうなの???

"奨学金"を返した親を待ち受ける貧困老後

 
畠中 雅子
2019/01/26 11:15
© PRESIDENT Online "奨学金"を返した親を待ち受ける貧困老後 
 
定年退職を迎えると、退職金という形で2000万円、3000万円というまとまったお金を手にする。しかし、マイナス金利のあおりを受けて、預金していても利息は微々たるもの。そこで、つい手を出してしまうのが投資なのだが、そこには思わぬ落とし穴がいくつも待ち受けているのだ。今回は「教育投資」について――。
※本稿は、「プレジデント」(2016年11月14日号)の掲載記事を再編集したものです。

なぜ、子どもの奨学金を親が返してはいけないのか

教育費は「聖域」と考えがちで、出し惜しみしないという人は多いでしょう。幼稚園から大学まで子どもにかかるお金は、オール公立で約1000万円、オール私立で約2500万円ともいわれています。塾や習い事など学校以外の出費も家族ごとに差があるものの、習い事にお金をかけすぎることは、将来の教育資金を前倒しで食いつぶしているのと同じなのです。

教育費プランで重要なポイントは、高校生までの教育費は家計から出し、貯金などを取り崩さずに済む年間収支の範囲内にとどめること。図にある大学教育に必要な学資は、小さいころから児童手当と学資保険でコツコツ貯めて高校卒業時までに用意しておきましょう。

しかし、奨学金や教育ローンを借りている家が多いのが実状です。現在、日本学生支援機構奨学金をはじめ、なんらかの奨学金を利用している人は2人に1人を超えています。奨学金を借りるのは、子どもに借金を背負わせて社会に出すということです。支援機構から、毎月10万円の奨学金と入学時の50万円を加算して有利子(第二種)で借りると、返済は最大月2万9770円が20年も続きます。

若い世代の家計診断をしていると、夫婦で奨学金を借りており、貯金ができないという家庭が多いことに驚かされます。奨学金の返済があるせいで、その子どもの生活や進路設計にまでマイナスの影響が出ています。

子どもにお金についての教育をするのも親の大事な役割でしょう。小さいころから、親が家計の状況や生活設計などをある程度伝えておけば、子どもは親にできるだけ負担をかけないよう行動し、責任を持って奨学金の返済も行うものです。

でも「お金のことは心配しなくていい」と、親が家計の事情を子どもにきちんと説明する勇気を持たずにいると、親のすねをかじり続けることに罪悪感を覚えなくなって、奨学金の返済に責任を持たず、親が返済する羽目に陥るケースもあります。

実は考えもの孫への援助

そうならないためには文系、理系など進路の分岐点になる高校2年生の時点で、親が援助できる限度を決めておきましょう。支援機構の返済シミュレーション機能を利用して、奨学金を借りる覚悟について子どもと話し合うのも大切です。

退職するころに孫が生まれると、援助をしたくなるのは人情です。しかし、その後は年金で賄いつつ、貯蓄を取り崩す生活が待っています。孫への教育資金に1500万円まで贈与税のかからない一括贈与する信託プランなどもあり、ついせかされがちですが、孫への援助は祖父母自身の自立が大前提です。

固定資産税や冠婚葬祭費などで、老後の生活は年間30万~60万円の赤字が一般的。贈与するときは元気でも病気や介護が必要になれば、その分の費用がかかり続け、老後破産の可能性もあります。1度信託したら子ども側が返してくれるとは限りません。「まとめて贈与するんじゃなかった」と後悔しないように、老後の資金計画をしっかりと立てましょう。

年の差婚でなくても晩婚化の影響で出産年齢が遅くなる傾向にあり、定年と教育費のピークが重なって老後資金の準備が遅れてしまうケースも多くあります。特に虎の子の退職金はあくまでも老後資金と考え、教育資金にあてることは絶対に避けなければなりません。

ファイナンシャル・プランナー
1992年にファイナンシャル・プランナーになり、新聞、雑誌などに連載記事を執筆。セミナー講師や個人のFP相談も行う。『老後が危ない! 年金月額16万円の生き残り術』をはじめ著書多数。(写真=iStock.com)