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韓国のあきれた徴用工判決に米国でも批判が噴出(記事転載)

古森 義久
2018/11/07 06:00
「韓国はきわめて無責任な国家だ」――。 
 韓国最高裁が日本企業に、韓国のいわゆる元徴用工とされる人たちに対する賠償を命じた。この判決の内容と、米国の反応を見ると、どうしても「無責任国家」という言葉が思い出される。
 冒頭の言葉は、米国の国際戦略問題の権威、エドワード・ルトワック氏による発言である。1年ほど前に私がインタビューした際、彼はためらわずにこう述べた。
 ちなみに徴用工に関して、あえて「いわゆる」という表現をここで使うのは、この裁判を起こした原告の“徴用工”とされる人たちは、日本側の情報によると「徴用工ではなく募集に応じた労働者だった」とされるからだ。安倍晋三首相も国会でそう明言した。

韓国が国家として無責任な原因は?

 ルトワック氏は米国の歴代政権の国防長官顧問などを務め、現在はワシントンの大手研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)の上級研究員として活動している。保守系の学者で、トランプ政権に近いことでも知られる。
 私がルトワック氏に意見を尋ねたのは、直接には北朝鮮の核問題についてだった。だが、北朝鮮核武装への韓国の対応を質問したとき、彼は文在寅政権への批判を込めながら次のように語ったのである。
「韓国が国家として無責任な原因は、国内の結束がないことだろう。国家的な意思がまとまらないのだ。それは韓国内に、自国の基本的なあり方をめぐって意見の分裂があり、国としての結束が決定的に欠けるからだろう」
 韓国では、民主的な方法で選ばれた歴代大統領たちが任期の終わりとなると、ほぼ誰もが犯罪者として扱われ、石をもて打たれることになる。以上のルトワック氏の説明を聞くと、その理由がなんとなく分かってくる。

米国の政策に大きな支障を引き起こす

 では、今回の韓国最高裁の判断に米国はどう反応しているのか。
 米国の各メディアの報道や論評、さらには専門家たちの見解発表を調べてみると、全体として韓国も日本も正面からは非難せず、きわめて慎重な姿勢が目立つ。
 だがさらに詳しく、幅広く、米国の反応を点検すると、やはり今回の韓国側の主張には無理があり、無責任だとみなす基調が浮かび上がる。ルトワック氏の韓国評がその基調につながっているともいえるだろう。
 米国の主要メディアの報道は、まずこの時期に日本と韓国が対立を深める事態が米国の政策にとって非常に大きな支障を引き起こすという点で一致していた。
「米国政府は、日本と韓国に、歴史に関する意見の相違を克服して米国との協力をともに増強し、北朝鮮の核の脅威をなくし、中国の影響力拡大に対処することを強く促してきた。そんな時期に日韓の対立がなぜ必要なのだ」(ニューヨーク・タイムズ10月30日付記事)
「韓国と日本の歴史をめぐる争いは、北朝鮮の核の脅威と中国の覇権拡大を抑えるための米日韓三国の協力を乱してきた。今回の韓国での判決は、この協力をさらに妨げることとなる」(ABCテレビの同日の報道)
「今回の韓国での判決は、北朝鮮の非核化や中国の不公正貿易慣行に対処するための、米国と日韓両国という同盟国との連帯の強化を阻むことになる」(ブルームバーグ通信同日記事)
 以上の報道は、韓国最高裁の判決が、米国の東アジア戦略にとって大きな障害を新たにつくり出したと批判する点で一致していた。
 しかもどの報道も、韓国側の判決が、1965年の日韓両国政府間の合意や、その後の韓国側でのこの種の個人の損害賠償は韓国政府が責任を持つという公式方針に違反していることを詳しく説明していた。同時に、日本側の安倍首相や河野外相の「韓国の動きは国際法的にもありえない」といった激しい非難声明も詳細に伝えていた。

韓国寄り学者も判決を批判

 こうした米国側の報道を詳しく読むと、今回の韓国最高裁の判決は 韓国側に問題があり、法治国家としての一貫した責任を果たしていないという認識がかなり明白に浮かび上がる。「韓国側が間違っている」という断定こそしていないが、非は韓国側にあり、法治国家主権国家としての責任の欠落が根底にあるとする批判の構図が明確だといえる。
 韓国に対する米国側のこの種の批判的なスタンスは、前述のニューヨーク・タイムズの記事の末尾で次のように象徴的にまとめられている。
スタンフォード大学の東アジア研究所の研究員ダニエル・スナイダー氏は、『朝鮮半島情勢や中国の動向によって、米国とその同盟諸国は団結して効果的な対処をとることが不可欠となっている。そんな時期に、日韓両国を離反させる動きが起きたことはきわめて不運だ。私はその点で韓国政府の判断に強い疑問を感じる』と述べた」
 スナイダー氏といえば米国でも有数の朝鮮半島専門の研究者であるが、日韓の歴史問題では韓国側の主張を支持し、日本には厳しい態度を示すことで知られる学者である。その米国人学者が、今回の日韓の対立では明確に韓国側の最高裁の判決への批判を表明したわけだ。
 こうした米国側の韓国批判が、判決をめぐる日韓対立に今後どう影響していくかは判断が難しい。だが、少なくともいまの段階では、米国は「非は韓国側にあり」という裁定を下しつつあるといえるだろう。そして、その裁定の背後にはルトワック氏の言葉に反映される米側の年来の韓国「無責任国家」論までが影を広げているようなのだ。