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元TBS支局長の「レイプ事件」を闇に葬るメディアの大罪

山口氏は不起訴をいつ知ったのか…(左=会見する詩織さん)/(C)日刊ゲンダイ 山口氏は不起訴をいつ知ったのか…(左=会見する詩織さん)/(C)日刊ゲンダイ拡大する
「知り得ない力があった」――。29日、安倍首相と昵懇の元TBSワシントン支局長、山口敬之氏(51)に「レイプされた」と訴えたジャーナリストの詩織さん(28)。報道陣に素顔を明らかにして会見した勇気に心から敬服する思いだ。詩織さんが訴えたように、首相と「近しい関係」というだけで司法がゆがめられたのであれば、重大犯罪と言っていい。報道機関であれば、絶対取り上げるべき事件なのに、なぜか、30日の大手紙はダンマリだった。

 30日の朝刊各紙を見ると、比較的大きく取り上げたのは東京新聞だけ。毎日、産経、日経は数行のベタ記事扱い。朝日、読売に至っては一行も触れていなかった。

 朝日、読売両紙に未掲載の理由を問うと、「会見は取材した。その後も取材は継続しています」(朝日広報部)、「取材や編集の経緯は従来お答えしていない」(読売広報部)と回答したが、成人女性が司法記者クラブで素顔を見せて告発したのだ。裏付け取材が必要なのは理解できるが、当時の捜査状況は所轄に確認すればすぐに分かるはずだ。むしろ、これほどの重大案件の裏付け取材にモタついて翌朝の朝刊紙面に入れられないような記者であれば、無能と言われても仕方ない。

■柔道の内柴は「懲役5年」の実刑判決

 山口氏は被害女性との間のメールで、酩酊中に性行為に及んだことを認めている。アテネ、北京両五輪の柔道金メダリスト、内柴正人のケースとほとんど同じと言っていい。内柴も泥酔状態の教え子に乱暴したとして準強姦罪で逮捕され、14年に最高裁で懲役5年の実刑判決が確定している。メディア各社は内柴の逮捕前から、疑惑を大々的に報道していたではないか。ジャーナリストの青木理氏はこう言う。

「不起訴になった事件で、書きにくいというのはわかります。ただ、詩織さんの証言によれば、警視庁の刑事部長が口を挟んで、直前に逮捕を取りやめたという。また、山口氏が北村滋内閣情報官に相談したとみられるメールが誤って新潮社に送られたことも明らかになっている。不透明な警察権力が行使された蓋然性が高いと思います。勘のいいサツ回りの記者なら、うすうす真相は気付いていると思います。警察への遠慮があるのでしょうが、メディアはもっと取材をして、報じるべきでしょう」

 山口氏はフェイスブックで反論しているため、真意は分からないが、被害女性の会見後、こう書き込んでいる。

〈不起訴処分はすでに昨年7月に全ての関係者に伝えられています。私はこの結論を得て、本格的な記者活動を開始しました〉

 しかし、山口氏は不起訴決定が出る前に安倍首相をモデルにした「総理」(初版16年6月9日)を出版している。つまり、不起訴処分が出る前に本格活動を始めているわけで、ツジツマが合わない。“第2の内柴事件”と言われ始めた問題が、闇に葬りさられることがあってはならない。