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【目良浩一の米東海岸レポート(2)】南北接近の米国で激化する「歴史戦」 日本蹴落とし狙う

産経ニュース / 2018年6月27日 11時4分
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慰安婦碑の除幕式=5月23日、米東部ニュージャージー州フォートリー(上塚真由撮影)
 米国でも6月12日の米朝首脳会談には強い関心が集まった。しかし、出された共同声明には具体性がなく、11月の米中間選挙を狙ったトランプ大統領の大掛かりな「政治ショー」であったとの評が出てきている。
 とはいえ、悲惨な結果が出ることが確実な核弾頭の撃ち合いも辞さないとしていた両首脳が一堂に会し、共同声明を出したこと自体が民主党政権では考えられなかったことである。また、世界に向かって金正恩朝鮮労働党委員長に非核化を公言させたことは大きな成果である。
 トランプ氏の出す手は予測しにくい。しかし、今までの固定概念にとらわれない新鮮さがある。今後の展開を見守りたい。
 ■フォートリー慰安婦記念碑
 5月23日に米東部ニュージャージー州フォートリー市で、慰安婦記念碑の除幕式が行われた。
 同市はニューヨーク・マンハッタンからジョージワシントン橋を渡ってニュージャージー州に入ってすぐの地点にある。住民の4割近くが韓国系で6年前から慰安婦像設置の話が持ち上がっていたが、反対意見もかなりあり、立ち消えになっていた。
 昨年、地元高校生のグループが映画「鬼郷」を観た後、慰安婦に関する詩を作った。その純真な高校生の詩を記念し、日本を直接非難しないなどの条件で市会議員が説得され、昨年12月に高校生の詩が刻まれた記念碑を建てることが市議会で正式に承認された。
 その市議会では日系住民や居住する日本人などが反対意見を表明したが、効果はなかった。市長は反対意見があることを認識して、できるだけ目立たない場所に建てることを日系人に表明していた。
 ところが、除幕された記念碑は、市の中心地区にある公園に設置され、しかも第二次大戦で米兵がドイツ兵と戦った最大の激戦、バルジの戦いにおける戦死者の記念碑に向かい合っている。この場所を数日前に察知した日系人(その人物は同市の名誉市民)は、より目立たない場所への移転を請願したが却下された。つまり、市は慰安婦問題をこの欧州での激戦と同等に重要な問題であると認識したことになる。記念碑を建てることに反対してきた日系人は市長に見事に裏切られた。
 除幕式では、韓国の太鼓隊が動員され、日本非難の演説が繰り返された。まったくの排日式典であった。このようなヘイトスピーチが米ニューヨークのすぐ近くの公園で行われたのである。
 除幕式が行われた翌日、現場に行った。白人の30代の女性が昼食を取るために公園に現れ、この新しい記念碑に注目していた。そして碑文を一生懸命に読んでいた。
 「何だか分からないわ」と彼女は呟いた。そして私の妻に「これ、好き? どう思う?」と怒りのこもった口調で聞いてきた。妻は「嫌いよ!」と答えた。彼女も「私もよ」と言って、去っていった。
 記念碑は上部に朝鮮服を着た女性の姿が彫り抜かれた石版があり、下部の石台の前面には、市議会で承認された中学生の詩が刻まれた、薄いアルミ板が貼り付けられている。もしかしたら、アルミ板を除去すると、厳しい日本批判文が現われるかもしれない。
 ■サンフランシスコにおける慰安婦学習指導指針書
 韓国系などによる日本批判は東海岸に限ったことではない。
 2年前、西部カリフォルニア州で高等学校の世界史で慰安婦について教えることが決定されたことは記憶に新しい。今年4月には同州のサンフランシスコ市の韓国系財団によって作成された慰安婦に関する学習指導指針書が、市内の18の高等学校に配布した。
 この学習指導指針書には元慰安婦李容洙(イ・ヨンス)氏などの写真とメッセージが掲載されている。学生たちに彼女らの境遇や苦難の経験を理解させ、虐待の程度がどの程度にひどかったかを話し合わせ、現代の人身売買と関係させて、どんな対策を立てるべきかを考えさせることを目的としている。
 しかし、李氏の証言が何度も変わってきていることはこれまでも指摘されている。だが、指導書には、李氏が特攻隊員の相手をさせられたとある。特攻隊の名誉まで引きずり降ろそうとしているのである。他の元慰安婦と称する女性の陳述と同様に、女性たちに関する話は、実際の経験よりももっと悲惨な印象を与えるよう、演出されていると思われる。
 このような学習指針書が使用され始めると、深刻な影響が出てくることは想像に難くない。将来、米国人のかなりの人々が、戦時中の日本人は本当に悪事を働いたのだと信じてしまうのだ。これに対抗する真実の慰安婦の姿を多くの人々に伝える必要がある。われわれは微力ながらその仕事に取り組んでいる。
 ■そのほかの動き
 最近、ニューヨークのリンカーンセンターで7月20日から9月2日までの間に「慰安婦」と称するミュージカルを韓国系の劇団が60回公演するという情報が流れてきた。内容はもちろん、日本を誹謗するものである。ニューヨークの日本総領事館に「これは2015年の日韓合意に違反するのではないか」と問い合わせたところ、「韓国政府が支援している確証がないので行動できません」との回答だった。日本総領事館は誰かが確証を提示するまでは行動せず、手をこまねいているようである。
 慰安婦像撤去裁判の的になったカリフォルニア州グレンデールは、国土交通省の肝いりで、かつて東大阪市グレンデール市内の公園に姉妹都市としての証として贈呈した日本庭園の大幅改良工事を今年1月に実施した。日本政府としては、友好を深める目的があると思われる。工事には、国交省から派遣された技師たち10人に加えて、現地日本人造園家とボランティアが参加して見事な庭園が出来上がった。
 3月にはロサンゼルスの日本総領事館が関与した「桜祭り」が行われ、千葉明総領事がグレンデール市長と共に桜の植樹式を行った。その結果、市の指導層と総領事館との関係は良好になっているように見受けられる。事実、市は最近、慰安婦像が設置されているそばの図書館で、日系市民が戦中に味わった収容所生活経験などのパネル展示を行った。
 しかし、慰安婦像に関しては、何も変わっていない。グレンデール市としては、慰安婦像を建てた後、日本政府の対応が良くなったので、この状況を維持することが得策と判断しているのかもしれない。ちなみに、市長は昨年、同市で制定した「慰安婦の日」の7月30日に韓国側に最大の賛辞を贈ったのである。
 米国を舞台にした慰安婦問題は沈静化するどころか激化してきている。米朝首脳会談の結果「軍事力」の行使が困難になった北朝鮮としては韓国と協力して、ますます「歴史戦」に力を入れ、日本を蹴落とし、米国と近い関係を築き上げようとするであろう。日本政府の決意が問われる。