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この決定を受け、関西電力(以下、関電)が気になる動きを見せている。同社の岩根茂樹(いわね・しげき)社長が「大飯3号機、4号機が稼働すれば、燃料費メリット分を(ユーザーに)還元したい」と、電気料金の値下げに意欲を示したのだ。
関電は現在、運転差し止めの仮処分を受けている高浜原発(福井県)の3号、4号機の抗告審を争っており、この裁判で「運転適当」との判決が出れば、一気に4基もの原発を動かせることになる。電気料金の値下げ幅もさらに大きくなるだろう。
電力大手10社はこのところの原油価格上昇を受け、今年4月まで3ヵ月連続の電気料金引き上げを決めている。各家庭にとって、その負担は小さくない。
そんな折に、関電が「電気料金を格安にします。安くなったのは原発を再稼働させたおかげです」とキャンペーンを打てば、どうなるだろうか?
アベノミクスの失敗で実質賃金が大幅に落ち込み、庶民の暮らしはいまだ厳しい。電気代が安くなれば、家計が助かったと喜ぶ人がほとんどだろう。3・11以降、日本国民の半数以上が原発の再稼働に慎重な姿勢を見せてきた。だが、関電の電気料金大幅値下げをきっかけに、全国で原発再稼働を容認するムードが高まるかもしれない。
行政の援護射撃も見逃せない。昨年11月、「パリ協定」が発効した。これは、地球温暖化防止のために196ヵ国・地域が参加する国際協定で、批准国の日本は「2050年までに80%の温暖化ガス削減」を目標に掲げている現在、環境省や経産省が中心となって具体的なCO2の削減プランを策定中だ。
だが、この目標をクリアするのは生易しいことではない。おそらく政府も関西電力と歩調を合わせるように、「目標達成の最後の切り札は、CO2を排出しない原発以外にない」と、再稼働のメリットを大々的にPRしてくるはずだ。
しかもここにきて、原発の代替エネルギーになると期待された自然エネルギーの前途にも暗雲が生じている。東北電力が、新たに基幹送電線を作らなければ、東北北部に発電所を新設しても接続できなくなると宣言したのだ。これで風力発電の開発は、一時ストップの事態となってしまった。
電気料金が安くなるのは、国や消費者が事故などの負担を押しつけられているからだ。本当に原発の再稼働を認めてもいいのか? あらためて私たちひとりひとりの見識が問われている。